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普通株式と種類株式(優先株式)の価値の違い


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これまで主に起業家とベンチャーキャピタル間の交渉に焦点を当ててきましたが、多くのベンチャーキャピタルは、

 

優先株だからといって株価を高くする位なら、普通株で株価を低くしてくれた方がいい

 

と考えているはずです。

 

一口に優先株といっても、これまで取り上げたとおり、内容は様々ですが、ベンチャーキャピタルベンチャー投資に種類株式を用いる主な観点は以下の2つです。

 

  1. ガバナンス
  2. M&A時の優先分配

これに加えて、業績に応じた普通株式への転換割合の調整が目的のものもあります。

 

1. ガバナンス

これは拘束力の強度の問題です。投資契約で規定することも可能ですが、投資契約はあくまでも当事者間の合意であるのに対し、登記された事項は絶対です。

そもそも種類株式を発行した瞬間に、「ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合」については、都度種類株主の承認を得る必要があると会社法上規定されています。(会社法第322条1項)

ただ、規定されている事項についていちいち種類株主総会を開催するのは運用上お互い面倒なので、特に制限したい事項について記載した上で、他の事項については種類株主の承認を得る必要がない旨記載するのが一般的となっています。

 

2. M&A時の優先分配

会社法上、一般的にベンチャー企業の買収に用いられる株式譲渡の場合は、優先株主に対する優先分配が有効に機能しません。

そのため、別途、経営株主とベンチャーキャピタル間で優先分配に関する取り決めを行っています。

つまり、

株式譲渡によるM&A時の優先分配を有効に機能させるのに、優先株式である必要はない

、ということになります。

もちろん、事業譲渡⇒会社清算や合併などの場合は有効なので、優先株式である意味が全くないとは言いませんが、ベンチャー企業の買収時には買い手側も売り手側も株式譲渡以外で行うメリットはほとんどの場合ありません。

 

ここまでは今までも主張しているところなのでおさらいですが、

 

  • もしM&Aを選択肢の1つとして考える場合の優先分配条項のメリット・デメリット

  • 普通株式優先株式の価値の違い

 この2点について、所感を書きたいと思います。

 

M&Aを選択肢の1つとして考える場合の優先分配条項のメリット・デメリット

【前提】

ベンチャーキャピタルは将来の成長を見込んで、相応のプレミアムをつけた株価をつけている 

=

実際事業を売却しようとするとその時点でそんな価値はない、大型調達や高い時価総額ベンチャーキャピタルの期待の大きさは現しているに過ぎない

 

+メリット

一般に起業家にとって不利な条件を呑むことを意味するため、ベンチャーキャピタルから投資を受けられる可能性が高まるかもしれない

 

-デメリット

前提として、買収者から見た場合、ベンチャーキャピタルが入っていようがいまいが、企業の評価は一定で、対価の分配は当事者間で適切にやっていただければ構わない。しかし、実際には買収を成功させるためには、そうも言っていられず、買収価格やスキームの検討にあたり、一定の配慮をせざるをえない。その結果、買収自体を断念する可能性すらある。

付帯して、

⇒ M&A時の起業家取り分がほとんど残らない可能性が高まる

(上述のとおり、ベンチャーキャピタルは相応のプレミアムをつけており、ベンチャーキャピタルの出資時よりも高く買われることはほとんどないが、その場合もベンチャーキャピタルが優先的に対価を受領するため、起業家の手元にはほとんど残らない)

 

⇒ M&Aの意思決定権をベンチャーキャピタルに委ねることになる

 

本質的には、実態以上に高い株価でベンチャーキャピタルから投資を受けて、実態が期待値に追いつかないまま出口戦略を迎えることになるのが問題です。高すぎる株価には気をつけましょう。

 

普通株式優先株式の価値の違い

会計上も税務上も、普通株式優先株式の価値は異なることは一般的に受け入れられています。一方で、その価値算定については、定まったロジックがあるわけではありません。

 

アメリカですと10倍程度違うのは普通ですが、日本でベンチャーキャピタルから投資を受けた後に10分の1の株価で従業員向けに新株予約件を税制適格で発行できるかというと、ちょっと厳しいような気がします。

一説では、2~3倍程度違う分には問題ない、ということも聞きますが、その場合も外部の株価算定を取る必要はあるでしょう。

 

さて、買収時についてですが、あくまでも相対取引なので、普通株式優先株式の価値が10倍違っても、おそらく何の問題もないでしょう。そのため、優先分配に関する覚書を起業家とベンチャーキャピタル間で締結している場合、覚書の内容に沿った分配額になるように、普通株式優先株式を異なった株価で取得してもらう、というのが現実的でしょう。

 

もし、普通株式優先株式が同じ株価で取得され、企業からベンチャーキャピタル資金移動をする場合は、買収者に買取られた時点でキャピタルゲイン課税がかかるので注意が必要です。会社を売った結果、実入りよりも課税の方が大きかったという事態も起きないとは限りません。

 

ベンチャーキャピタルは投資金額の回収可能性を高めるために様々な提案をしてきますが、理想的な会社と組みたい・傘下に入りたい・会社を売りたいと思ったときに、それらが足かせになる可能性があるため、ご注意ください。

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